「空手は生き方そのもの」
取材当日、田中選手は道場の稽古を終えたばかりだった。汗を拭きながらも、その目には静かな炎が宿っていた。
佐藤記者(以下、佐藤):世界大会で優勝されたとき、どんな気持ちでしたか?
田中選手(以下、田中):正直、喜びよりも先に「終わった」という感覚がありました。10年間、この日のために生きてきたわけですから。でも次の瞬間には、「次の目標は何だろう」と考えていた(笑)。
佐藤:空手を始めたのはいつ頃ですか?
田中:5歳のときです。父が道場に連れて行ってくれたのが最初でした。最初は泣いてばかりで、全然強くなかった。でも先生が「逃げるな」と言い続けてくれた。その言葉が今でも心に刻まれています。
稽古の日々と挫折
田中選手の道は決して平坦ではなかった。高校時代に大きな怪我を経験し、一時は競技を辞めることも考えたという。
田中:膝の靭帯を断裂したとき、医者には「もう試合には出られない」と言われました。でも諦めきれなかった。リハビリ中に改めて気づいたんです。空手は私の「生き方」そのものだということに。
佐藤:その経験が今の強さに繋がっているんですね。
田中:そうだと思います。怪我をして初めて、体の使い方を根本から見直しました。今の技術の多くは、あのリハビリ期間に生まれたものです。
次世代へのメッセージ
佐藤:空手を目指す若い人たちへ、メッセージをお願いします。
田中:「続けること」だけが唯一の才能だと思っています。才能がある人間は山ほどいる。でも続けられる人間は少ない。10年続けたら、必ず何かが変わります。それは空手だけじゃなく、人生全般に言えることだと思います。
取材を終えて道場を後にするとき、田中選手は再び稽古着に着替え、一人で型の練習を始めていた。その背中に、真の「武道家」の姿を見た気がした。
取材・文:佐藤美咲(BUSHIDO編集部)